脚質について
(1)大逃げ
最初から先頭に立って後続を大きく突き放す作戦です。 馬の能力で大逃げ作戦を打つ場合や若手騎手が騎乗し、ハンデ斤量で他の馬よりも軽い場合、馬場状況で前の馬が残りやすい傾向の場合など、騎手がそれぞれの状況で大逃げ作戦を打ちます。
人気薄でも馬場状況を見て大逃げを打って大金星をGETできた例としては、2009年エリザベス女王杯11人気クィーンスプマンテの大逃げ勝利は、単勝で7710円でした。 さらにクィーンスプマンテと共に大逃げを打った2着のテイエムプリキュアは、12人気でした。 この日は重馬場で、人気のブエナビスタは後方から追い込んでくるタイプだったので、一か八かの賭けで大逃げを打ったと考えられます。 ブエナビスタが後方からすごい脚で猛追しますが、及ばず3着。 3連単は1,545,760円の高配当になりました。
馬の能力で大逃げをする馬では、サイレンススズカが有名です。 他の馬とは格違いのスピードを持っており、逃げる競馬になって翌年は5連勝で宝塚記念を制覇しました。
(2)逃げ
レースがスタートしてすぐに先頭を走り、そのままゴールインする馬の戦術です。 レース前から力が入っており前に行きたい気持ちが強い馬や、他の馬が前に居ると力が発揮できない馬、特にダートのレースで前に馬が居て、砂を被ると嫌がる馬もいます。 また先頭を走ることで、コースで横に並ぶ馬が居ないので、距離のロスがない内を通れること。さらに馬場状況の良いところを自由に通ることができるのがポイントです。 ただし、後ろにいる馬に状況を見られる為、目標にされて、ゴール前で差されてしまう危険性もあります。
競馬では、馬の身体に例えて、先頭を「ハナ」と呼び、逃げ馬が先頭に立つと「ハナに立つ」と表現します。 競馬中継で「OOがハナに立ちました」と言うときは先頭に立ったということです。 是非、競馬中継でも聞いてみて下さい。 逃げの戦法で有名なのはダイワスカーレット。 淡々と自分のペース走っていき、逃げてエリザベス女王杯と有馬記念を制覇しました。 また、地方競馬は逃げる馬の活躍が多いです。コース自体が中央の競馬場ほど大きくないので、小回りで追い込みが利かず、逃げ馬がそのまま勝ちきるシーンが多くみられます。
(3)先行
上記した逃げ馬の後ろでレースを運び、程よく溜めた脚を直線で伸ばし、逃げ馬を交わしてゴールする戦法です。 ある程度前の位置に付けておくことで、後方から追い込んでくる馬を凌ぎます。 競馬の正攻法で、馬の能力を引き出しやすい乗り方です。 スタートセンスや他の馬に囲まれても怖気づかない精神力の両面を持ち合わせる必要があります。 代表的な馬は、凱旋門賞で日本馬最高着順の2着を残したエルコンドルパサーです。 1999年ジャパンカップでは、2番手で先行し、直線半ばで抜け出し、GI馬エアグルーヴ、スペシャルウィークの猛追を凌ぎました。
(4)差し
レース中に直線まで馬の隊列で中団あたりに位置して、直線で溜めた力を一気に発揮するために追い出す戦術です。 スピードで押し切る逃げとは違い、瞬発力に優れた鋭い脚が使える馬に向きます。 先行馬との違いは、中団前目に位置する馬が先行馬、中団やや後方に位置するのが差し馬です。
また競馬場でよく聞く「差せ!」という観戦者の声は、この差しから来ており、競馬では、馬が前の馬を追い抜くことを「差す」と表現します。 ですので、逃げ馬や先行馬でも一回抜かれて、また抜き返せば、「差し返した!」と表現されます。
代表的な差し馬は、日本で3歳クラッシックレースを制覇し三冠馬として、凱旋門賞に挑戦し2着になったオルフェーヴルなどです。 2011年皐月賞では18頭中真ん中やや後ろの11頭目を走り直線抜け出して来ました。
(5)追い込み
レーススタート後、後方に控えて最大限に力を溜め、最後の直線で一気に瞬発力を発揮させる作戦です。 直線が長いコースでは、長い距離を追い込めるので得意とする馬がいます。 直線が短いコースでは、いくら追い込んできても直線が短く前の馬を捕まえることができないので、後方から徐々に押し上げていく「マクリ」という戦法が使われることがあります。
追い込みは決まれば豪快で印象的ですが、直線で前に居る馬が内側を走っているので、その間の進路を探して勝負に出るか、前の馬が走っている外側に持ち出して、内側と比べてコース距離のロスを覚悟で進路を確保してしっかり走らせるかの判断が必要となります。
追い込みの代表例は、2000年の根岸ステークスのブロードアピールです。 15頭中直線に入るまでトーヨーデヘアと並んで、最後方を走っており、最後の直線では全頭を凄い追い込みで差し切りました。 このレースは競馬を観たことがない人でも競馬が好きになる程のレースだと思いますよ。
応援する馬、馬券を買った馬の脚質も把握した上でレースが観れると楽しさもさらに増すかもしれませんよ。 また予想においても重要な役割を果たしますので、是非振り返ってみて下さいね。